フリーオペラント型ABA(応用行動分析)とは

今や発達障害の現場で多く活用されているのがABA(応用行動分析)です。
この応用行動分析は、療育の場だけでなく、人の活動するありとあらゆる分野に適応され、応用されています。
殊、療育の場でのABAでは、コミュニケーションや学習が難しい子どもたちに、物事の伝達、生活習慣を学ぶため、ABAの観点より、出来るだけ分かりやすい環境設定やカードなどで選択ができる方法を使って、療育方法として確立していきました。
しかし日本においては、そのやり方に違和感を感じ、80年代もの早くから異議を唱えたABAの専門家たちがいました。
その人たちが考え出したABAのやり方は、あまり環境設定などをせず、カードなどを使うことなしに、出来るだけ日常生活に即したやり方でした。
このやり方をABAの元である「行動分析学」の創始者であるスキナーが言っている「フリーオペラント事態」から名前を取り、「フリーオペラント法」と名付けました。
ABAと言うと、環境設定を重要視するやり方が主ではありますが、最近では、アメリカなどでも日常生活に即した「PRT」などが流布されつつあり、少しずつ拡がってきているのが現状です。
日常の中でABAを使った療育を進めていくと、環境設定をしっかりと行ったやり方よりも発達は緩やかではありますが、進めば進むほど、自発性が増し、また1つのものを学ぶと、似たようなものを複数学ぶという「般化」の事態がかなり強く表に出てくるようになり、何を指示することもなく、沢山のことを自ら学習するようになります。何より子どもたちの笑顔が増え、楽しく学習をする様になります。
私たちはこの様なやり方で十数年間にわたり、療育、教育を行って参りました。
もし何かに行き詰まっていたり、療育法に違和感を感じられたりする保護者の方がいましたら是非ともご連絡ください。
子どもさんの成長を、一緒に考えて参りましょう!


行動分析学とは?

アメリカの心理学者、スキナー博士(Burrhus Frederic Skinner)が提唱した心理学の名称です。

行動分析学とは、元々、鳩やラットなどの動物実験から生み出された物で、

心理学の教科書には必ず書かれている「オペラント条件付け」を基本として成り立っています。

スキナーは心理学者でありながら「心」そのものに大きな疑問を抱いていていました。

(※彼は心そのものの存在については否定はしていません。)

例えば、車や飛行機のエンジンの様なものは、どの様に動くのかが十分に分かり、メカニズムを学べば、誰でも作り、理解することが出来ます。例えば、ウイルスの様に、手を加えることは難しいけども、顕微鏡で見ることが出来、その動きを十分では無いにしろ、観察し、予測することは可能です。

そして、何と言っても人の生活を大きく助けています。エンジンの発展は、一日で人間を地球の裏側まで移動させることが可能になりました。ウイルスの発見は、伝染病の抑制・撲滅に多大なる貢献をしています。これらは、科学技術の結晶です。

作成し、観察出来れば、人の生活を大きく助けることも可能です。

しかし心は、エンジンの様に、「作ることはまず不可能」です。また、どんな装置を使っても、ウイルスの様に、「心そのものを見ることは不可能」です。

現時点で、日本だけでも、うつ病の増加、自殺の増加など、心の研究において、人の生活に貢献しているものがあるとは言い難いのです。科学には限界があり、実は現時点で「心を科学の対象とするのは不可能」なのです。

ですから、スキナーは、

「心は見ることも触ることもできないものだから、現時点では人間には取り扱うことの出来ないもの」

という態度を取ります。

そして「心」代わりに、見たり、扱ったり出来る「行動」を扱おうと考えます。スキナーはどうやったら「人」や「動物」は「行動」するのか?行動に法則はあるのか?を、自分たちが「見える範囲」で考えたのです。

この「見える範囲」の行動の法則を、スキナーは、

「行動分析学」(Behavior Analysis)

または、

「徹底的行動主義」(Radical Behaviorism)

と呼んだのです。


強化の原理とは?

自分たちが「見える範囲」で考える「行動」を見て、そこに一つの法則があることを発見します。

原理は単純です。

掻い摘んで言うと

「自分が起こした行動の後に良いことが起こる」

「自分が起こした行動の後に悪いことが無くなる」

と、「行動が維持、もしくは増加する」

この行動が増えることを「強化」と呼んでいます。

また、

「自分が起こした行動の後に悪いことが起こる」

「自分が起こした行動の後に良いことが無くなる」

「行動が減少、もしくは消失する」

この行動が減ることを「罰」と呼んでいます。

当たり前で非常に簡単なのですが、日常生活に適応させるとなると、この原理で考えるのは少々「コツ」の様なものが要ります。


文責 : 小野 真